Kとの生け贄フライト。

私はいつもより1時間早くロッカールームにやってきた。


あたし・主婦の頭の中


なぜかって?

それは、先にK先輩の生け贄になった同期から

聞いていたから。


「Kと一緒にフライトする時は、

先輩より早く来て、着替えを済ませておかないと

着替えられなくなるからね!」


あたし・主婦の頭の中


普通に考えても、先輩と後輩。

一緒に飛ぶとなれば、後輩の方が先に来て、

仕度を済ませるというのが、礼儀かもしれない。


でも、Kの場合は、そういう礼儀とかではなく・・・

単なるいじめ?


ロッカールーム。

入口に近いところに、先輩方のロッカーがあり、

奥に進むにつれ、我々新人のロッカーがあったのだけど・・・



あたし・主婦の頭の中



少しでもKが先にロッカールームにやってきたとしたら・・・?

Kは入口に近い自分のロッカーの前に

ドンと荷物を広げ、狭い通路をふさいでしまうらしい。


あたし・主婦の頭の中



新人が自分のロッカーに行きたくても、

荷物をどかして奥に通してくれるKではない。


もちろん、

先輩の荷物を勝手に動かすことなんてできるわけもなく、

我々新人は着替えることができない。


そして、フライトの時間ギリギリまで

わざと荷物を広げて通さないという意地悪をしておきながら、

Kは新人に向かってこう怒鳴るのだ。


あたし・主婦の頭の中


もちろん、新人に言い訳できるわけでもなく・・・

ガミガミガミガミ説教されながら、

ゲートに向かうハメになるというのだ。


だから、私は同期のアドバイス通り

1時間早くロッカールームに行き、すぐ着替えを済ませた。


しばらくして、

ドアが開く音がして、Kが入ってきた。


私はすぐにKに挨拶をした。


あたし・主婦の頭の中



会うなり、なにかしら怒鳴りつけるKのことだ。

私が身構えたのは言うまでもない。


ところが、Kは・・・


あたし・主婦の頭の中



私のことを睨みつけただけ、

何も言わずに、さっとロッカールームに消えて行った。


あたし・主婦の頭の中


それからも、Kは私を完全無視の状態。

まるで私が存在しないかのように

ロッカールームを出ても、ゲートに着いても

完全に無視したまま、フライトに突入した。


Kはビジネスクラス、

私はエコノミークラスの一番後ろのエリア担当。

機内ではKとの接点がない分、まだ気が楽だった。


あたし・主婦の頭の中



それでも、この同じ飛行機の中にKがいる、

いつエコノミークラスに姿を表わすか・・・

と考えると体がガタガタと震えた。


しかし、幸運なことに特に何事も起こらないまま、

シートベルト着用のサインがついた。


あたし・主婦の頭の中


担当ゾーンのお客様のベルトチェックを終えると、

私は前方ビジネスクラスにいるKのところに

挨拶に向かった。


もちろん、心臓バクバクである。


あたし・主婦の頭の中


しかし、ここでも驚くべきことに

Kは私を完全無視で、

こごとや暴言を吐くことはなかった。


私は最後尾のジャンプシートに座りながら

余裕をかましていた。

葉巻くわえプカプカしてる、

そんな姿がぴったりの気分だった。


今にして思う。

この時の私は、なんて楽観的だったのだろう?


あたし・主婦の頭の中



この後起こる事態に何も気付いていなかったのだ。


その時だ。


ピンポ~ン


私のジャンプシートのインターフォンが鳴ったのは!

いやな予感がした。

恐る恐るインターフォンを取ると・・・

や、やっぱりだ!l


あたし・主婦の頭の中



着陸態勢に入ってるのに、前に来いと?

でも、先輩の命令だ。逆らうわけにはいかなかった。


Kの座るビジネスクラスギャレ―横の

ジャンプシートに行くと、

どういう風の吹きまわしか?

Kが最高の笑顔で私を出迎えてくれているじゃないの!


あたし・主婦の頭の中


えっ? ステーキ・・・?


Kが指さす方を見ると、

ギャレ―の台の上に、ビジネスクラスのステーキが

氷入りの水のグラスも添えて用意されていた。


あたし・主婦の頭の中



正直、私はこんなところで(Kが横にいる状況で)、

こんな時に(着陸態勢に入っている最中)

ステーキなんか食べたくなかった。


でも、私は新人! そして、相手はKだ。

今、私がしなければいけないことはただ1つ!



あたし・主婦の頭の中


お礼を言って、ステーキを食べるしかない。


あたし・主婦の頭の中


ステーキを食べながら、ふっと私はこんなことを考えた。


『もしかしたら、Kはいい人なのかもしれない。

本当の親切心で、

エコノミー担当、ビジネスクラスとは、

この先しばらく縁がない新人の私に、

このステーキを食べさせてあげたかったのかもしれない』


って。



あたし・主婦の頭の中


食べている間も
機体がどんどん高度を下がっているのがわかる。

早く食べ終わらないと! 

私は必死でステーキを飲み込んでいった。


ついに、この音を耳にした。


あたし・主婦の頭の中

そう・・・この音は・・・


あたし・主婦の頭の中



ふっとギャレ―横の窓の外に目をやると・・・

なんてこったい!

街のビルがハッキリクッキリ

目に飛び込んできたじゃないの!!


あたし・主婦の頭の中



と、その時だだった。Kが言った。


あたし・主婦の頭の中


私が片づけておくから・・・?

後輩が食べたものをK自ら片づけてくれるというのか?


やっぱり私は間違っていた。

K先輩・・・怖いけど、ホントはいい人なんだ。

それなのに、私ったら・・・誤解していた。


あたし・主婦の頭の中



そう言って、自分のジャンプシートに戻るため、

ギャレ―を出ようとしたその時だった。


「どこまで、この子、卑しいのかしら~」



あたし・主婦の頭の中



一瞬、私は自分の耳を疑った。



あたし・主婦の頭の中


聞き間違い?

いいえ、聞き間違えではなかった。

Kは続けてハッキリとこう言った。


あたし・主婦の頭の中



Kはわざと私に聞こえるような大きな声で

何度も何度もこう言った。




「ホントに卑しいんだから~」




あたし・主婦の頭の中



その時、私はようやく気付いたのであります。

Kは私にこれがしたかったんだ!ってこと。


K先輩、

あなたって、あなたって・・・

やっぱりただものじゃなかったよぉーーー!


追伸:

最後部のジャンプシート、外の風景が涙でかすんで見えたっけ。

今思えば、この時の私はなんて可愛かったんだろう。

Kに鍛えられ、この後、どんどん強くなる私のよ~



 おしんスッチーK先輩のいじめ物語は不定期にまだまだつづく~





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関東地方、梅雨明けしたらしいですね。本格的な夏の始まり~。本当に台湾育ち、夏大好きだった私ですが、年々夏が苦手になる・・・。外を歩いていると、アスファルトでカラカラに干からびたミミズの姿に自分が重なります。娘2人は今日が終業式。恐怖の夏休みも始まります!はぁ~