あの東京に大雪が降った日のことです。

実家に行くと、母が1枚の紙を手に、言いました。


あたし・主婦の頭の中


翼君・・・。

翼君は、実家に新聞を配達してくれる若者です。


よく母から彼の話は聞いてました。

「本当に感じがよくて、頑張って!と

心から応援したくなるような青年なのよ」



あたし・主婦の頭の中


「翼君が先日、この手紙を持ってね、

最後の挨拶に来てくれたの」


あたし・主婦の頭の中


そうして、手紙を差し出しました。

担当の家に配ったと思われるその手紙は、

もちろんコピーしたものでしたが、

手書きの文字で丁寧に書かれていました。

時間をかけて書いた様子が伝わってきます。


  

   ご愛読の皆様へ


こちらの区域の配達と集金を担当していた藤澤翼です。

この度、2月一杯で4年間の奨学生を無事に終えることとなり、

大変お世話になった皆様にご挨拶とご報告をさせて頂きます。


長野から上京して、大学生と新聞奨学生の二足の草鞋を履いてから

4年が経ちました。

今振り返ると、あっという間だったように思います。


しかし、辛いこともたくさんありました。

悪天候の日の配達、


あたし・主婦の頭の中



目をこすりながら受けた授業、



あたし・主婦の頭の中



しんどくて泣きながら配達したこともありました。



あたし・主婦の頭の中



何度も新聞奨学生を辞めようと思ったこともありました。



でも、区域の読者の皆さまに「頑張ってね」と激励して頂いたり、

「ありがとう」と声を掛けてもらえたことが


あたし・主婦の頭の中



僕にとっての心の支えであり、頑張ろうと思う原動力でした。

本当に感謝しております。


あたし・主婦の頭の中



4年間でたくさんの東京のお母さん、お父さん、

おばあちゃん、おじいちゃん、お姉ちゃん、お兄ちゃんに

見守ってもらえてとても幸せでした。


涙でかすんで途中から文字が見えません・・・。


あたし・主婦の頭の中


窓の外は、

昨晩から降り始めた雪が降り積もってました。

4年の間、きっとこんな雪の日だってあったことでしょう。


友達との付き合いも、翌日のことを考えて

断ったことも少なくなかったはずです。


読みながら、

そんな光景が浮かんでいました。

母は言いました。

「翼君、4年間、よく頑張ったわよね」


あたし・主婦の頭の中



母の言う通りだと思いました。


毎日、2時前には新聞の配達所に行って、

配達を終え朝を迎え、大学の授業に出て、

また夕刊の配達をする・・・

その生活を4年間続けられた彼の努力は

高く評価されたに違いありません。


あたし・主婦の頭の中



母は改めて、

翼君の手紙を読み返しながら言いました。


あたし・主婦の頭の中



しみじみとそう言いました。


と、その時です。それを横で聞いていた長女が


あたし・主婦の頭の中



「大学生なら翼君のお母さん、

きっとうちのママとそんなに年が変わらないはずじゃない?

ってことは・・・」


あたし・主婦の頭の中



「東京のお母さんじゃないと・・・思うんだけよね~」


あたし・主婦の頭の中



「ママもそう思わない?」


あたし・主婦の頭の中


そう長女に振られ、一応、相槌を打ってみたものの・・・

私はとても複雑でした。


だって・・・だって・・・。


母たちが大声で笑い合う中・・・


あたし・主婦の頭の中


私はとてもじゃないけど、笑えなかったのですよ。



あたし・主婦の頭の中



そう、自分の年齢も考えず、

いつまでもお姉さんポジションにしがみ付く私・・・

複雑な乙女心・・・長女にはわかるまい。



翼君の手紙はこう締めくくられていた。




僕は4月から、社会人として新たな職場で働きます。

この4年間で経験したことを生かし、精一杯働き、

社会に貢献したいと思います。


3月から新しい担当に代わる予定です。

読者の皆様にご迷惑にならぬよう、

しっかり引き継ぎをしたいと思います。

次の担当者も元気に、一所懸命頑張ると思いますので、

今後とも朝日新聞、ASA国分寺南口をよろしくお願いします。


4年間、大変ご迷惑をおかけしました。

応援して頂き、ありがとうございました。


        ASA国分寺南口

         藤澤 翼



翼君、卒業、就職おめでとう!

私は、いつも何か困難なことに直面した時、

一番辛かった時のことを思い出します。

そして、あの時に比べれば!と自分を奮い立たせ、

また頑張れる大きな力に変えていきます。


4年間、奨学生をやり通したその頑張りは、

きっとこれから起こりうるたくさんの困難をも

越えられる大きな力になることでしょう。


4年間、頑張ったね。お疲れさまでした!

これからも、皆で応援しています。


 東京のお姉ちゃんより(←懲りてない)





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母から見せてもらった手紙が余りにも感動的だったので、借りてきて、夜、夫に見せました。夫もおいおい泣いていました。以前、夫の実家の前に新聞の配達所があったそうで、夜中の3時には、新聞を載せたバイクが配達所を出ていくのを見ていたそうで、その姿に翼君が重なったようです。

翌日、私は泣きながら記事にしてもいいか、翼君のいる配達所に行きました。翼君は就職する会社の研修に出て不在でしたが、後日連絡をくれ、記事にすることを快く承諾してくれました。翼君、ありがとうね。