台湾旅行記(2)近くて遠い台北
成田から飛行機で3時間ちょっとで、台湾桃園国際空港に到着。
改めて、思ったわ。台湾は近い!! って。
こんなことなら、もっと頻繁にくればよかった!
空港に降りると・・・
あ~ん、この香りよ! この匂い!
早くも空港に漂う懐かしい台湾の香り・・・。
空港って、その国の独特の匂いがあるのよね~
空港で鼻の穴をこんなに激しく動かしているのは・・・
私くらい? いや、私と・・・陰で頑張ってくれている
麻薬探知犬くらいであろう。
私のこの異常というべきクンクンぶりに、
思わず姉が聞いてきたわ。
だから、私は言ったの。
「ほら? カオにも感じない? この台湾の懐かしい香り・・・」
そう言うと、姉もその場でクンクンし始めた。
そう言われてみれば・・・
シンガポールは行ったことがないけど、
タイの匂いと言われてみれば、そんな気がしないでもない・・・
と思った瞬間、姉が叫んだわ!
た、確かに・・・。
これ建物の中に広がるエアコンの匂いだわ!!
鋭い姉の指摘!
でもね、いいの!
エアコンの匂いだって、これは紛れもなく台湾の匂い!
しばし郷愁の思いに浸らせて頂戴!!
クンクンクンクン・・・クンクンクン・・・。
すると姉が言ったわ。
前にも書いたことがあるけど、
姉は某旅行会社で10年以上、海外添乗員をしていたので、
旅のガイドはお手のモノなのだ。
私など何も考えず、
クンクンクンクン匂いを嗅いで歩いているだけで、
横からテキパキと指図してくれるからとても助かる。
それからも、姉に言われるまま入国、両替も済ませ・・・
我々はゾロゾロと姉についてリムジン乗り場までやってきた。
えっ?
ここで、私は初めてクンクンしていた鼻を止めた。
というのは、見ると市内まで行くバスはいくつかあるようなのだ。
すると、姉は、
ちょっと! たった30元ってどういうことよ!
いつからそんなセレブ的発言をするようになったの?
添乗員さん、困るわ! 庶民に高いの勧めてくれちゃ!!
まさかこの120元のバス会社と陰で契約でもしているんじゃない?
いいわ! 添乗員さんに任せてなんていられないわ!
私はそう言うと、テキパキと皆の分の90元バスのチケットを買った。
急にテキパキと、流暢に(見せかけた)中国語を話し、
チケットを買う私を、長女は尊敬の眼差しで見つめている。
ふふふ・・・どう?
ママだってやるときゃ、やるのよ!
ほどなくしてバスが来て、私たちは乗り込んだ。
荷物だって、ちゃんとバスの下の部分に入れてくれたし、
ゴージャスな(または趣味悪とも言える)
カーテンだって付いているし、
この90元のバスのどこが120元に劣っているっていうのよ!
やがてバスは走り出し・・・長女が私に聞いて来た。
ところが、すぐに高速に乗るはずが・・・
いつまでたっても街中を走っているバス。
それも、普通の路面バスのように、バス停に止まっては、
乗客が降り、乗客が乗り・・・を繰り返しているのだ。
「おかしいわね~どうしたのかしら?」
と、首を傾げている私に姉が言った。
そうして、姉は続けた。
「どうもこのバス、台北市内まで直通じゃないみたいよ。
桃園市内(空港のある市)を回ってから行くみたいね~
ママのせいでどんだけ時間無駄にしたか・・・はぁ~」
溜息をついている。
だから、私はこう反撃したわ!
すると姉は、あなたわかっているの?
というような口調でこう言ってきたのだ。
えっ? さ・・・・さん・・・3?
いやだ! 私、×3じゃなくて、×30だとばかり・・・
だから・・・
差額30元×3人分×30=2700円。
2700円も得になる! と勘違いしていたのだ。
たった270円の差で、こんなに時間を無駄にするなんて・・・。
長女の尊敬の眼差しが、一気に軽蔑の眼差しに変わった瞬間。
皆に攻められながらも、もうバスは走り出し、
乗っているしか仕方がないのだ。
そんな時、バスの窓から見える風変わりな店に
気がついた長女が私に聞いてきた。
そう、さっきから、普通の商店やコンビニに混ざり、
やたら眩しいライトで照らされたショーケースのような店が
いくつも点在しているのだ。
そのショーケースのような店の中には、
かなり大胆な衣装を身にまとった若い女性がいるだけ・・・。
も、もしや!!
前に聞いたことがあったけど!!
ビンロウ西施(シースー)、またはビンロウ小姐
っていうやつじゃない??
ビンロウ売りのお姉さんのことだ。
なぜこんな大胆な格好をと思われるかもしれないが、
要するに、私のようなおばちゃんよりも、
綺麗なお姉さんから買いたいという男性心理?
あぁ・・・ビンロウって言われてもわからないわね。
椰子の実から出来た噛みタバコ? みたいなものなの。
口の中でクチャクチャ噛んで、ガムみたいに噛み終わったら、
ペッと吐き出すんだけど・・・(詳しくはウィキペディア へ)
ママ(小5)とカオ(中2)が台湾に越してきて、
初めてそれを見たときは、ホントびっくりしたんだから!
だって、タクシーの運転手さんが車を停めて
いきなりペーッと吐き出したんだけど・・・
口から吐き出されたものは、真っ赤なのよ!!
タクシーの運転手が吐血した!
えらいこっちゃ!と思って震えていたのに、
次の瞬間、タクシーは何事もなかったように走り去り・・・
それからも、街中で赤い血を吐くおじさんをよく見たんだけど、
皆、吐血しながら、何事もなかったように立ち去っていくのよ。
後でそれが血じゃなくて、
ビンロウを吐き出しているんだと知るまでは、
「なんて台湾の人は、吐血体質なんだろう?」って、
思っていたのよ。
今は規制があって、
道路でペッと吐くと罰金が取られるようになったそうで、
余り見られなくなったみたいだけどね~
懐かしさから、つい思い出話に花を咲かせてしまったわ~
それを聞いていた(聞かされた)長女は・・・
いつになったらって・・・?
そんなことママに聞かれても・・・でもね!!
そうよ、
このバスに乗らなかったら、桃園のビンロウ西施も
見られなかったわけだし・・・ねぇ・・・
ところが、皆、大ブーイングであった。
そうなのだ。
この旅行は急遽決まり、慌ててチケットを取ったので、
現地到着も遅いし、帰る日のフライトは早朝便・・・
3泊4日と言ったって、私たちには滞在時間が余りないのだ。
やがてバスは車内灯を消し、高速道路に入っていった。
車のライトだけが光る夜のハイウェイ。
私は桃園の遠ざかる街の灯を見つめながら、心に誓った。
「これから先は、何も口出しせず、すべてカオに従おう!」
台湾には着いたものの・・・
台北の街のネオンはまだまだ遠い・・・。
つづく
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