入社した頃の制服のエプロンは・・・

全身すっぽりフルカバー。






まぁ制服が汚れないのはいいんだけど、

これがシワになりやすい布で出来ていてね・・・

アイロン掛けるのも一苦労!


フライト前に、

身だしなみチェックみたいのがあったんだけど、


「さぁエプロンを見せないさい!」


とチェック担当の先輩(得てして怖い)に

言われると、

アイロン掛けの苦手な私はいつもでアウト!






「マイナス1」と減点になる。

勘弁してよ!このエプロン!!


と思ってたら・・


ほどなくしてエプロンが変わった!






素材も変わり、まったくシワにならない。

まさにアイロン要らずのエプロンに!


でも、このエプロン・・・後ろから見ると、





いいえ・・・ちゃんとエプロンしているのよ。

小さいんだって、ホント!

なんだかノーパン喫茶で活躍しそうよ!






じゃなければ・・・相撲取りの化粧回し?






小さいにもほどがあるわ!

なんだかカッコ悪いし、気に入らないわ!


私を含め、

皆散々新しいエプロンの悪口ばかり言ってたわ!



そんなある日のこと。

私は地方便の乗務。

小さくて、古い飛行機でのフライトだったの。


目的地が近づいて、

シートベルト着用のサインが付いた。


「皆さま~

シートベルト着用のサインが付きました。

どうぞお座席にお着きになり、

シートベルトをお締めください」


そうアナウンスをし、

お客様のシートベルトをチェック。




さぁ、お客さんも全員シートベルトをしめたし・・・

私もジャンプシートに座ろりましょう!


そう思ったときよ。






激しい尿意に襲われちゃった。


本来ならベルト着用のサインがついたら、

きちんと座席に着いていないといけないけど・・・


でも、私は乗務員、

まぁ、いいわよね?


私はすぐにトイレに飛び込んだわ!

でも、この古い飛行機・・・

トイレの鍵の噛み合わせがなかなか上手くいかない・・・。



ガチャガチャガチャ・・・






もう全身鳥肌もんよ!

これ以上、我慢できない、漏れちゃうわよ!


そうだわ!

お客さんは今、

シートベルトを締めているんだから、

誰かにドアを開けられる心配はないじゃない!


そう思った私は、すばやく便座に腰を下ろした。






幸せの青い鳥ってこんな近くにいたんですね・・・。





飛行機はグングン高度を下げた行った・・・。

でも、我慢していた分、私は便座から離れられない。


カチャカチャ・・・


あら何の音かしら?

ふっと前方を見ると、えっ?


誰が開けたわけでもなく・・・

機体が前傾するに合わせ、

ドアが少しずつ開いてるじゃない!!


マ・・・マジでSKY?






こんな状況の中でも、

自分の意思とは裏腹に、

まだ出続けてます!勢い止まらず!


座ったままで手を伸ばすにも・・・

届かないわ!


ドアはもうかなり機内に向かって開いている。

私の手の届かないところに行っちゃった!






そしてついに、恐れていた


 開いちゃいました!!






幸いお客さんは皆前を向いている。

しかし!一刻も早くどうにかしたい!

パンツを上げ、パンストを釣り上げ、スカートを下げ・・・。


あぁ!!そんなことゆっくりやっている暇はない!

こんな姿・・・他人に見せてなるものか!


その時浮かんだの!






ほら!なんていうの?

よく稽古場で力士がこうやって、

土俵の中を中腰で歩いているわね・・・摺り足っているの?


ソロリソロリ・・・






いい!いい!なかなかセンスがあるわ、私。

このまま新弟子検査受けに行っちゃう?


なんて冗談言ってる余裕はなくてよ!

必死の形相で、ドアノブを握り・・・


バタン!




       ↑セルライトが消えません・・・



あぁ・・・よかった!

危険を察したカニが無事に

巣穴に帰ってきた気分ってこんな感じ?


冷汗をかきながら、思ったわ。


これがすっぽりタイプのエプロンだったら、

どうなっていた?

こんなに早く行動に移せなかったと思うって。


このエプロンじゃなかったら、

あの醜態をお客さんに曝し・・・、

外国のどんなお土産より喜ばれる最高の土産話、

お客さんに無料で提供するところだったわ!


ありがとう!エプロンちゃん!

今まで散々悪口言ってた私を許して!



それからだ。

同期が、このエプロンの悪口を言うと・・・、






すかさずフォローする私がいた。


「えっ?かなり使えるってどこが?なにが?」

と突っ込まれると・・・

悲しいかな苦笑いで逃げるしかなかったけど。


その度に心の中で呟いたわ!


「あなたもあの機種のあのトイレに

着陸前に入ったらわかるって!!」


追記

しかし、やはりこのエプロン、乗務員には不評で・・・

その後すぐに姿を消し、普通のエプロンになってしまった・・・。

好きだったのに!!



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こんなこともあったわね・・・。今、改めて読み返しながら、あの頃の光景がくっきり目に浮かんできて、冷や汗出ちゃったわ。でも、誰にも気づかれなくてホントによかった!!!