最高に寂しいクリスマスの思い出
華やかなイルミネーションにクリスマスソング・・・
街がクリスマスムード一色になるこの季節。
この季節になるといつも思い出す・・・
あの20歳の時の寂しいクリスマスを・・・。
バブルな時代だった。
今以上に若者はクリスマスにはしゃいでいた。
高価なプレゼントにホテルでの食事、
彼氏のいる友達がそんな話で盛り上がっている中、
私は1人暗かったわ・・・。
そんな私には綺麗なクリスマスツリーだって、
「あんた私にケンカ売ってるの?」と蹴飛ばしたくなるくらい・・・。
ちょっと! 人の気持ちも考えないで、
これ見よがしに、ティファニーの紙袋を下げて
歩いている無神経なそこの君!(どこが無神経なんだ?)
ちょっとは寂しい人間の気持も考えたらどう?
その紙袋、あなたのよく行くタカキューの袋に入れて歩きなさいよ!
まったく気が利かないんだから!(お前に言われたかない?)
クリスマスが近づくにつれ、私のイライラは募り、
とうとう恐れていたクリスマスイブ当日を迎えた。
姉は彼氏と出かけて行った。1人家に取り残された私・・・。
ちょっと自分に問うてみる。
ねぇ・・・あたし、
20歳の女の子がイブの日に家になんかいていいの?
ダメ! ダメよ! あたし。
でも、イブに1人、浮かれた街に出るには
かなりの勇気がいるわよ、あたし。
そうよね・・・う・・ん・・・、そうだわ、今日がイブだって思うからいけないんじゃない、あたし!
頭良いわ! あたし!
そう心に強く言い聞かせ、私は街に飛びだした。
しかし、その考えはすぐに浅はかだったとわかった。
どんなにイブじゃない! と自分自身に言い聞かせても無理。
まわりは幸せなカップルだらけ・・・
今日がクリスマスじゃないという方がおかしかった。
馬鹿だったわ、私・・・。なんでこんな日に1人・・・
うっっ・・・
居たたまれなくなり、住宅街に逃げこんでも・・・
そこにはファミリー愛があふれていたわ・・・。
気がついたら私、マッチ売りの少女になっていたの。
「マッチはいかがですか~」
身も心も寒くて凍えそうだわ・・・。
だから、1本マッチを擦ってみたの。
真っ赤に燃える炎・・・
あら? その炎の向こうに見えるのは誰?
ま、まさか・・・
王子様は言ったわ。
ハハハ・・・フフフ・・・
でも、夢は長くは続かなかったの・・・
ちょっと! どうしたというの? 王子様
やがて王子様はマッチの炎とともに・・・
姿を消したわ・・・。
私はもう1度マッチを擦ったわ。
やがてこの炎の向こう側には・・・
えっ?
なによ、あなた!
私は慌ててマッチを消したわ。
でもね、あれからどんなにマッチを擦ったって
王子様は現れてくれなかったわ・・・
そんな時・・・思ったの。
この寂しさって・・・どこから来ているのかって・・・。
そしたらね、わかったの。
これは恋人がいない寂しさじゃないんだって。
まわりの幸せそうな人たちが、どんな風に自分を見ているのかって、
そんな自意識過剰なところから来る寂しさだってわかったの。
きっと皆は私のこと「恋人もいない可哀想な人」って思っているに違いない。
それが私を寂しくさせているんだって・・・。
そう気がついた私は思った。
こうなったら、妄想列車に乗り込むしかないわ・・・
ガタンゴトン~ガタンゴトン~
悪いけど、そこの幸せそうなカップルの皆さん、
私にも彼がいるの!
ちょっとやめてくれない! そんな同情するような目で見るのは!
私ね、今日、断れない用事が入っちゃってね、
だからホテルのレストランも、彼にキャンセルして
もらわなきゃならなくなったのよ。
そりゃ彼もプンプンだったわ!
何でも私のために半年も前から予約していたのにって・・・。
だから、仕方なく今日は彼の家でクリスマス過ごすことにしたのよ。
今から彼の家に急いで行かないと!! あっ、その前に買い物ね。
「う・・・ん、どうしよう・・・」
ちょっと大きな声で言ってみるの。
シャンパンも買ったし、ケーキも買ったし・・・
後は彼の待つ部屋に行くだけよ!
あら、あなたたちも幸せそうで何よりだわ!
うん! 私もすっごく幸せよ!
あぁなんて幸せなんだろう! あたしって!!
彼ったら首を長くして待っているわね!
たくさんの荷物を持って、部屋に入り・・・
そうよ・・・今日の妄想列車の終着駅はここ・・・。
20歳のクリスマスイブ・・・
自宅のドアを閉めた途端、
1人芝居の後遺症で余計みじめで寂しくって・・・。
街がクリスマス一色になると決まって思い出す、
あの寂しかったクリスマス・・・。
見栄を張って妄想列車に乗ったがために、
1人で鳥のモモ焼き3本食べるはめになった悲しいクリスマス。
朝起きたら、床に骨が転がっていて余計泣けたわ・・・。
皆さんにも悲しいクリスマスの思い出なんてあるかしら?
あったら教えて~。チキンの骨3本を上回る悲しいクリスマスが。
コメント