からのつづき

2ヶ月ともに過ごしてきて知ったこと。
青年の名前は「裕」(ゆう)。

裕の毎日は俳優になる夢を叶えるために動いている。
演技のワークショップに参加したり
エキストラ、オーディション…。

急なオーディションにも参加できるように
決まったバイトはせずに、
空いた時間にタイミーでバイトをしている。

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裕はいつにも増して、
気合を入れてオーディションに向かった。

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今をときめく人気のクドカン作品となれば
裕が張り切るのも無理はない。
まして鹿児島が舞台となればなおさらだ。
上京して6年、いまだに裕の寝言が
鹿児島弁なことを私は知っている。

オーディションはうまくいったようだった。

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嬉しくて、部屋の中を駆け回る私を見て
裕は笑っていたけど

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違いますよ…
あなたが嬉しそうだから、私は嬉しいんですよ。

チキンを食べながらも、
裕は興奮が止まらなかった。

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それは可能性があるわ!
興味のない人間に
もう一度演技をやらせることはないはず!
クドカンが裕の演技を
もっと見たいと思ってくれたということだ。

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その数日後…

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私は自分のことのように嬉しかった。
裕の努力が実を結んだのだ!
きっと田舎の両親も喜んでくれるはずだ。

ところが、その日からも
裕は演技の練習に余念がなかった。

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その時、私は知った。
大きなドラマのオーディション、
まして、メインキャストとなれば
1回のオーディションで決まるなんて
生易しいものではなかった。
これからまだ数回オーディションが続くらしい。

しかし、裕は幸運にも最終選考まで残った。

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そう言って、裕はオーディションに出かけて行った。

が…
帰ってきた裕の手には

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どうやら裕は、気合が入りすぎて、
空回りしてしまったようだ。
セリフを途中で忘れ、焦ったあまり、
過呼吸のような状態になってしまい
挙句、「もう帰っていいよ」と言われたと…。

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落ち込む裕に私は声をかけてあげたかった。
でも、私は犬で…
人間の言葉はしゃべれない。

だから、私は裕を少しでも元気付けてあげようと思った。

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裕は私を見て声を出して笑った。

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裕は笑いながら動画を回した。
私はさらに彼を笑わせようと
必死に彼にエールを送った。

その晩、裕はTikTokに投稿した。

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このたった1回の投稿が
この後の人生を大きく変えることになるとは
その時の裕も私も
まったく想像すらしていなかった。

つづく

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今日は早めの投稿です。親へのインタビューノートのイベントに参加してくださった皆さん、21時より打ち上げZoom会がありますのでよろしくお願いいたします。私は今から支度をして、K美の家から参加します。