認知症になって母は毒が抜けて、菩薩になった。

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しかし、時として、
かつての母が現れる時があるようだ。

ホームの職員さんに言われた。

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あー、そうだ。
私が子供の頃から知ってる母は、
誰よりも負けず嫌いだった。

私が小学1年生の時だった。
夏休みに母と子の自然教室という
2泊3日の合宿に参加したことがあった。
確か長野県だったと思う。

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喜んで川に入ったものの
川は夏でも足がかじかむような冷たさだった。

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時折、魚が目の前を泳いで行くが、
素手でなんか捕まえられるわけもなく…。

寒さでみんな早々に川を出た。

そんな中、母はひとり魚を追った。

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しばらくすると、母は

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どうやら、魚の休憩処のような岩場を見つけたらしい。
その岩場に手を突っ込み
次から次へと魚を捕った!

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母は周りの人も感心するくらい
一人で何匹も魚をとり、
みんなに賞賛され、得意げだった。

しかし…次の日。

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結局、東京に帰る日まで
母はずっと民宿で寝ていた。
母と子の自然教室は私たちだけ
姉と妹の自然教室になった。

今でもゲームをすると、
あの負けず嫌いの母が現れるらしい。


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デイサービスに行ってたときも、「イクコさん、ゲームになるとすごい燃えてます!」とよく職員さんに言われた。そして、きっと私もそんな高齢者になる自信がある。