ちょっとブログのタイトルから逸れるかもしれないが、
まずは私の祖母の話から始めたいと思う。


大学生の頃、時間があれば、神奈川の祖母の家に泊まりに行っていた。お小遣い目当てというのもあったが、祖母とおしゃべりするのが私は好きだったからだ。

祖母は子供の頃から「男に生まれてくればよかったのに」と言われるほど男勝りで、大正生まれながら、私と同じような現代的な価値観を持ち合わせていた。
高齢なのに宵っ張りで、よく深夜遅くまでいろんな話をした。多分、実の娘(私の母)以上に祖母から恋愛話や結婚生活での苦労話を聞いていたと思う。

ある日、祖母が女学生時代の初恋の話をしてくれたことがあった。通学路の途中にある河原で、毎朝すれ違う少し年上の素敵な男子学生がいたという。祖母はその男の子に「影(かげ)」というあだ名をつけ、毎朝すれ違うのを小さな喜びにしていた。

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そして、そんな自分の気持ちを密かに日記に綴っていた。

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祖母は、その日記を誰にも見つからないように部屋に隠していたそうなのだが、ある日、学校から帰ると、日記を手にした父親(私の曽祖父)が仁王立ちになり、烈火のごとく怒っていた。

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日記を勝手に読まれたことに、祖母は強い怒りを覚えたという。

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しかし、父は厳しい言葉を投げつけた。

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「影」という名前を父親が口にしたことで、
祖母の淡い恋心は、一瞬にして消えてしまったという。今まで大切にしてきた想いが汚されてしまったように感じたからだ。

祖母は私にこう言った。

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なぜこんな話を書いたかというと、コロナ禍のとき、私はよくこの祖母の言葉を思い出していたからだ。

祖母の言った通り、私の青春時代は、戦争もなく平和で、おまけに時はバブルの真っ只中で、世の中が浮かれまくってた。もちろん、私も浮かれていた。

失恋もしたし、自分の思い通りにならないこともたくさんあったけど、
でも、何かに規制されることのない「自由」が、そこにはあった。お金さえあれば海外旅行もできたし、友達と夜通し遊ぶことだってできた。


だが、世界がコロナウイルスに覆われた2020年、我々はその「自由」を一つずつ奪われていった。外出の自粛、学校の休校、行事の中止。自分の青春時代と比べ、若者たちがそれを享受できない現実を前に、私は何ともやるせない気持ちになった。と同時になんだか後ろめたい
気分にもなった。


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そんな思いを抱えながら鑑賞した映画『この夏の星を見る』。作家・辻村深月さんの小説の実写映画だ。

ニュースで流れる「クラスター」「パンデミック」「ロックダウン」「濃厚感染者」…
以前は聞き慣れなかった言葉が日常的に使われるようになっていたコロナ禍の2020年を舞台にしたこの作品は、部活動を制限された中高生たちが主人公である。

休校、マスク生活、ソーシャルディスタンス、黙食…。私から見たら、制限のある「かわいそうな学校生活」の中に彼らは置かれている。でも、そんな中、彼らは「しかたない」で済ませず、「何ならできるのか?」を模索する。

そして、彼らはオンラインを活用し、手作りの望遠鏡で星をつかまえスピードを競う「スターキャッチコンテスト」を実施する。
茨城、東京、長崎・五島の高校生たちが始めたこの活動は、やがて全国に広がっていく。生徒たちの熱意を受け止めた大人たち(教師たち)も全力で協力する。スターキャッチコンテストのシーンでは、私は高校生に戻って(厚かましいにもほどがある)ドキドキしながら、スクリーンの中、星を探してしまった。負けたくないと心臓がバフバフした。まさにこの映画のコピー「最高で、2度と来ないでほしい夏。」を一緒に体感した気持ちになった。


「かわいそうな世代かどうかは、私たちが決めること」

まさにその通りである。

「かわいそう」と勝手に決めつけていた私自身を、心から反省し、熱い感動とともに、映画館をあとにした。



かわいそうで終わらせたくない青春がたくさん詰まってます。
止まっていた時間の中にも、
ちゃんと輝く瞬間があった!
ぜひ、映画館でスターキャッチしてみてください!
 

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本日、映画『この夏の星を見る』が公開になりました!この作品に、茨城県の天文部・広瀬彩佳役として、次女が出演させていただいてます。余談ですが、オーディションって、本当にシンプルで、受かるか落ちるかの二択。たとえ最終の2人まで残っても、選ばれなければ、振り出しに戻るわけで…。私はいつも思ってしまう。最終まで残ったら、ポイント5、ポイントが10貯まったら役がもらえる!そんな風にならないものか?と。(もちろんなりません笑)

次女は、小さい頃から打たれ強い子で、今まで本当にたくさんのオーディションに落ちてきましたが、そのたびに立ち直って、また挑戦してきました。ただ、ある時期に立て続けに、良いところまで残って落ちるが続いたときは、鉄のメンタルを持つ次女も、相当落ち込んでしまい…。ちょうどその頃、大学進学が決まり、将来のことをいろいろ考えるタイミングとも重なったのか、「好きなことだけど、もし才能がないなら、就職も考えたほうがいいのかな…」と、ぽつりと漏らしたりしていました。

でも、『この夏の星を見る』の試写を観て帰ってきた夜のこと。家に帰るなり、「見終わったあと、こんな素敵な映画にもっと出たい!って心から思った!」と、目をキラキラさせながら話してくれました。悩んでた気持ちを一気に吹き飛ばしてくれるような作品だったみたいです。次女にとって、この映画はただの出演作じゃなくて、「やっぱり自分はこの道が好きなんだ!」って、再確認させてくれた大切な作品になったようです。