からのつづき

9時、整理券番号が呼ばれ、
我々は受付に向かった。

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受付で申請をする。

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私は、12個入りの箱を受け取る。

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まずはビニール伸ばしだ。

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破いてしまわないかヒヤヒヤする。

しかし、同じテーブルの端で
熱心に袋を広げてるご夫婦は

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なるほど!
その手があったか! 
あーやって伸ばしたほうが
破れないかも!

そのご夫婦の袋は、
しっかり伸ばされたせいか、
我々のビニールより透明度が増して見えた。

そして、そのご夫婦は、私たちに
惜しみないアドバイスを送ってくれた。

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こんなふうに

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のちに私たちは、
そのご夫婦のことを
「師匠」と呼ぶことになる。

師匠夫婦は、今回が2回目。
今回は、自己ベスト更新を目指して参加したそうだ。

本当に手際がいいし、
質問攻めにしても

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全部丁寧に教えてくれる。
本当に優しい師匠だ。

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師匠夫婦は、あっという間に詰め終わって

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さすが師匠!
平均より9個も多いではないか!

師匠夫婦が帰られた後も、
私たちは必死に詰めた。

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続いて、私も夫も16個でやり切った。

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これで全員終了!

と思ったら、
ツレちゃんだけまだ格闘していた。

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まだ戦うんか?

22個目を詰めている。その時だった。

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会場に静かな悲鳴が響いた。

破れたら、
新しいビニールはもらえるのだが
ビニールの中身を
全部出してからでないともらえない。

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ツレちゃん、振り出しに戻る。

ここからまた
どれだけ時間がかかるというの?
桃狩りに行く時間はあるのだろうか?

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夫にツレちゃんの応援を頼み、
女たちは、買い物欲に駆られ、
前にあるアウトレットへ。

ツレちゃんのことなど忘れ(ごめん)
「安い」「安い」と気がつけば、カゴいっぱい。

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ふっと思い出し、詰め放題会場に戻ると

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夫は消え、応援団が次女に変わったいた。

そして…

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途中から、ののこも夫もやってきて
みんなで

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全員が応援団になっていた。

そして、1本結びが完成した!

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気がつけば、
我々の周りにいた知らない人たちまで
拍手してくれていた。

なにこの達成感!
まるで高校の体育祭みたいだ。
みんなで作戦会議しながら、戦いに挑み、
勝利した瞬間のような感動だった。

しかし、その感動も束の間、

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ところが、その自慢も長くは続かなかった。
後ろの女性が

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師匠へのマウントは、
秒速で返り討ち。

それにしても、
この詰め放題の会場の人たちは、
みんな温かかった。

朝から一緒に並び、同じビニール袋と格闘し、
コツを教え合い、
成功すれば自分のことのように拍手する。

ほんの数時間前まで他人だったのに
気がつけば同じ目標に挑む”戦友”になっていた。

220円の詰め放題が、
人と人をここまで結びつけるとは思わなかった。
ちょっとした青春だった!



   

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信玄餅を詰めるだけなのに、こんなに知らない人と話し、笑って、応援し合うとは思わなかった。「そこ押して!」「いける!」「おめでとう!」と、会場が一体になっていて、本当に体育祭みたい。大人になると、こんなふうに初対面の人と同じ目標に向かって盛り上がる機会って、意外とない。220円で信玄餅を思い切り食べるぞ!という当初の目的はすっかり忘れ、青春時代カムバックな体験だった。