からのつづき

朝3時。
目覚ましで起きた。
外は当然、真っ暗だ。

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まずはひと安心。

準備をして下に降りて行く。
ホテルの温度計は、

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4時20分、
ホテルの送迎バスに乗り
阿里山駅へ向かった。


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駅のホームには、
祝山駅へ向かう人たちで
すでに列ができていた。


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そして、
いよいよ祝山行きの列車が入ってきた。

その瞬間、
みんな一斉にスマホを構える。

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考えることはみんな同じだ。

祝山駅までは約30分。

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阿里山まで来たからといって、
必ずご来光が見られるわけではない。

昨日から、
それだけが心配だった。


そんな話をしているうちに、
列車は祝山駅に到着。


駅には、
今日の日の出時刻が掲示されていた。

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いやいや!
せっかくここまで来たんだから、
展望台の最前列で見たいじゃない!


階段を上がり、
その先にある展望台へ向かった。


そして、そこで目にした光景に、

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言葉を失った。

目の前いっぱいに広がる、
大雲海。

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こんな景色、
本当にあるんだ……。


まだ訪れたことはないけど、

きっと天国って
こんなところなんじゃないか?


やがて、
真っ白だった雲海が
少しずつ薄いピンク色に染まり始めた。


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なんて幻想的なんだろう。

しばらくすると、
祝山のガイドのおじさんがやってきて
解説を始めた。


もちろん中国語なので、
全部はわからない。
でも、

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そんな言葉が聞こえるたび、
観光客から、パチパチパチパチ!
一斉に拍手が起こる。

どうやら、
今日の雲海はかなり素晴らしいらしい。


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そして、こんな美しい景色、
ふたりにも見せてあげたいと思った。

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でも多分、
ふたりはこう言っている。


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そっか。そっち側から見たら、
珍しくもないか。


そしてついに、
太陽が少しずつ顔を出し始めた。

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次の瞬間、

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そこにいる全員から
歓声が上がった。


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きっとスマホを持っていなかったら、
みんな拍手していたと思う。

国籍も年齢もバラバラ。


でも、
ここでご来光を見ているみんなが、

今、同じものを見て
同じように感動している。

そんな不思議な一体感があった。

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昇ってくる太陽を見ていると、
新しい日の光が、
体の中に溜まっていた
雑念とか煩悩とか、

全部洗い流してくれるような
気持ちになった。


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せっかく洗い流された煩悩が
夫の一言で戻ってきたわ。


さて、昨日教えてもらった通り、
帰りの列車を乗り過ごすわけにはいかないので
駅へ向かった。

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帰りは阿里山駅まで戻らず、
途中の沼平駅で降りる予定だ。


昨日、ガイドさんが
おすすめしてくれたのだ。

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ということで、沼平駅で下車。

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ここから
水山巨木を目指す。

道には矢印があるので、
その通りに進んでいく。


ところが……


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我々が不安になるのも
無理はない。

なぜなら、人っ子ひとりいない!

でも、
道は合っているはず。

水山巨木へ向かう遊歩道は、
昔の森林鉄道の線路沿いを
歩いて行くらしいから。


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誰もいない。
木々に囲まれた線路の上を
ふたりで歩いていると、

自然と口から出てくる歌は、
もちろん、これしかない。

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さらに歩いていくと、
突然、視界が開けた。


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目の前には、
またまた素晴らしい雲海!

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「雛族聖山ー塔山」
ここから見えるのは
標高2663メートルの塔山。


塔山は、
台湾の先住民族・ツォウ族にとって
神聖な山とされている。


言い伝えでは、
善き人の魂が帰る場所とも
されているそうだ。

なるほど。


死者じゃなくても、
ここに立っているだけで
魂が安らぐわ。


そして再び、
♪ダーリン ダーリン♪と
歌いながら歩いていく。

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すると、その先に――巨大な木が現れた。

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水山巨木。以前は樹齢約2700年と
推定されていたそうだが、

現在、より新しい調査では
約1081年と推定されているそう。

2700歳から1081歳。

ずいぶん若返った!
それでも私より
1000歳以上年上だけど。


夫と比べると、
その大きさがよくわかる。


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ご来光を見て、
雲海を見て、
水山巨木まで見た。
大満足!

来た道を戻り、
ホテルへ向かった。


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ホテルに戻って朝食。
なのだが、朝食の写真なし!
ご来光で写真を撮りすぎて、
このあとのために
スマホは部屋で充電中。


ただひとつ覚えているのは、

パッションフルーツを
いっぱい食べたこと。


朝食を済ませ、
ホテルをチェックアウト。


阿里山駅へ向かい、
荷物をロッカーに預けた。

まだ行きたい場所がある。
神木駅だ。

かつて、
阿里山の見どころといえば、

「阿里山の神木」だった。

私が修学旅行の作文の表紙に
貼っていた絵葉書。


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この神木に、
もう一度会いたかった。


私が訪れた頃には、
すでに落雷による大きなダメージを
受けていた。


その後、
1997年の豪雨で幹の一部が倒れ、

残った部分も倒れる危険があったため、
1998年、安全のため人工的に
放倒されたという。


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神木駅に着くまで、
ドキドキしていた。


が、ありゃ!

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あれから長い年月が経ち、
神木は苔に覆われ、
周りの森に溶け込むように
横たわっていた。


そうか。44年って、
こういうことなんだ。

私がここに来なかった間にも、
阿里山にはずっと時間が流れていたんだ。


でも、見に来られてよかった。
小学生、中学生の頃に見た阿里山を
もう一度、自分の目で見ることができた。
これで思い残すことはない!

12時。ビジターセンターで、
嘉義へ向かうツアーの車を待っていた。


すると、昨日、
中国語のガイドさんの説明を
英語で通訳してくれたご夫婦に
また会った。


私が子どもの頃、
台湾に住んでいたこと。

ご夫婦が20年間、
シカゴで暮らしていたこと。

奥さんの妹さんが
日本に住んでいた時代には、
何度も日本へ遊びに来たこと。

いろんな話をした。

そして、
出会った記念に、

一緒に写真を撮ってもらった。

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44年ぶりに訪れた阿里山。
ずっと見たかったご来光が見られた。
素晴らしい雲海も見られた。
水山巨木にも会えた。

そして、
あの神木にも
もう一度会うことができた。


親切なご夫婦との
嬉しい出会いもあった。


阿里山で
またひとつ、
忘れられない思い出ができた。



   

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旅先でステキな風景に出会うと、「娘たちにも見せてあげたいな」と思う。今回も一緒に行くか迷った。でも、今回の旅はとにかく朝が早い。若くて朝が弱い娘たちには向かないし、「起きろ!」「支度しろ!」「早くしろ!」私もそんなことばかり言って、ストレスが溜まりそうだったので、今回はシニア夫婦旅にした。阿里山であのご来光を見たとき、「あぁ、やっぱり娘たちにも見せてあげたかったな」と、一瞬思った。でもね。もしかしたら、この年だからこそ、ご来光がこんなにもありがたく感じられたのかもしれない。そして何より、まだ足腰が元気なうちにここを訪れることができてよかった。旅には、そのときの年齢だからこそ心に響く景色があるのかもしれない。